2007年06月09日

安藤裕子 Live Tour 「再生」

中央奥に浮かぶ「月」が目を引くステージには、楽器部隊が緩い弧を描いて一列に並ぶ。月をスクリーン代わりにイメージの断片を浮かべつつミニマル調の少し不思議な曲に導かれて、緩やかな寛衣を纏った姿の歌姫の降臨。衣装が、目の覚めるような青。

安藤裕子のツアー最終日に遊びに行ってきた。J-Waveの番組などでキャラクターは知っていたので、何か演出を入れてくるだろうな、と予想していたのでオープニングは想定通り。でも予想通りだったのはそこまでで。声が発せられた瞬間に事前の予想は裏切られた。良い意味で。声が良い。「美声」と表現するとちょっと違う。低音から中音域の声が、抜けが良いと言うか良く通る。レコーディングされた音源の印象とは違って、会場中の空気が共鳴するような力強く心地良い声を持っていることに驚かされた。これだから、音楽は生で聴いてみないと分からない。

バンドの演奏は、ソウルとかジャズ風に横に揺れる穏やかなグルーヴを紡ぎ出す感じ。その上に和風テイストな歌が乗るという、ちょっと不思議な組み合わせ。体温を徐々に上げつつも熱くはなり過ぎないように少し抑制を利かせた音は、どこか懐かしいような、あるいはほろ苦いような。穏やかな幸せ感を浮かべつつも、何か大切なものを失った記憶を呼び起こされるような寂しさみたいなものが混じり合う。この、なんとも表現し難い感情はどこから来るのだろうか?

曲間に彼女が語った話にヒントが。ツアーの最終日だったのだけど、これで最後だと思うと寂しくなるという話を何度も繰り返していた。ちょうどツアー中に30歳を迎えて、ふと考えると両親と歳が近くなったように思えたこと、気が付いたら自分も次の世代を世に送り出すような年代になっていたこと。そんな話に続いた曲は、「帰ってくる場所」がテーマ。10代の頃の、色褪せ始めて失いつつある思い出を懐かしく寂しく想う感情と、それでも戻ってくるべき場所があるという安堵感みたいなものが同居しているような、彼女の紡ぎ出す音には、いくつもの感情が織り混ざっているように思える。

少し飛躍してしまうので説明はつかないのだけど、彼女の音には死というものと向き合った人の意識みたいなものを感じる。時間は流れて、過去に自分が持っていたものは次第に失われていくけれど、それは次の世代に受け継がれて時代は繰り返す。見た目は変わっているかも知れないけど、いつの時代も大事なものは同じであって、それが「戻ってくるべき場所」なのだと。死には生が続き、また同じ大切なものを見出すという生死観。今回のツアーのタイトルは「再生」なのだけど、そういう意味もあるのかな、なんて。

声と音に想起させられて、そんなことを漠然と思い浮かべながら聴いていた。次の機会にもまた戻ってこよう。そう思える場所をまた一つ見つけた気がする。

shabon songs
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